研究代表者よりご挨拶

FROM-J 研究代表者 山縣邦弘よりご挨拶

厚生労働科学研究費補助金腎疾患対策研究事業FROM-Jの研究代表者を務めさせていただいている筑波大学医学医療系臨床医学域腎臓内科学の山縣邦弘です。このホームページにおとずれていただいた患者様、そのご家族ならびに医療従事者、関係者の皆様、FROM-Jにご関心を持っていただき、ありがとうございます。

今なぜこのFROM-J研究が必要なのか、改めましてご説明させていだきます。皆様もご存じのことと思いますが、2007年末のわが国の慢性腎不全による維持透析患者数は275,119人で年々増加しております。これは一般人口100万人あたり2153.2人となり人口あたりの透析患者数は日本が世界で一番多いのです。また新たに維持透析療法を開始される患者さんたちも未だ年々増加しており、昨年は36,900人を超えております。慢性腎不全が進行してひとたび透析療法が始まると、一生透析を続ける必要があり、透析施設への通院、透析中の時間的・身体的拘束など、患者様ならびにご家族の負担は多大なものがあります。さらに透析医療に要する医療費は年間1兆3000億円を超えており、このまま慢性腎不全のための透析を新たに始める患者様が増え続けると、この透析に要する医療費を社会が支え続けるのも困難となることが予想されます。特に日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化社会が進展しております。働き手となる若年世代が減少する中で、新たに透析にはいる患者様が増加していくのを何とか食い止めなければなりません。

腎臓病は病気の始まる早期では、尿中にタンパクや血液がもれてくる、あるいは血液検査で血清クレアチニン値が同年代の方よりほんの少し(0.1mg/dl位の差です)高いなどの検査の異常のみで、自覚症状は一切伴わず、放置されることがこれまで非常に多かったことが知られております。いざ自覚症状が出現するころには、もう既に透析療法を必要とするほど進行しており、手遅れの状況であることがほとんどです。また最近の透析を始められる患者様の特徴としては、糖尿病、高血圧などが長期間続いた結果腎臓に障害を来す患者が全体の半数以上を占めるようになっており、働き盛りの生活習慣病を放置する結果、壮年期に慢性腎不全まで進行する患者さんが増加してきております。

さらに最近の検討では、このような慢性腎臓病の患者様が日本には1300万人をこえる数おられることがわかっており、このような患者様を確実に見つけ出し、適切な治療を施すことにより、この増え続ける新規透析導入患者を減少につなげる医療を見いだす必要があります。全人口の10分の1をこえるほどの多数の慢性腎臓病患者様の管理加療を行うには腎臓専門医だけでは不可能であり、腎臓を専門としない医師、看護師、保健師、栄養士などと協同で加療、指導していくことが必要と考えられます。

そこで今回の研究では、日本全国15都県の腎臓病の診療をリードする大学病院に拠点施設となっていただき、拠点施設近隣の49地区医師会が研究実施地域となり、その中の約500のかかりつけ医の先生たちのもとの約2500人の慢性腎臓病の患者様に研究にご参加いただくことになっております。この研究では、2009年日本腎臓学会より発行された慢性腎臓病診療ガイドに沿った治療を受けていただいた上で、かかりつけ医の先生のところで管理栄養士さんからさらに生活指導、服薬指導、食事指導を受け、受診継続を促す体制をとった場合と、そうでない場合での患者様の受診継続ならびに、腎臓専門医との連携に差が出るのか否か、さらにはその結果、腎機能の予後にどのような影響が出るのかを数年間かけて調べることとしております。この2つの方法のどちらになるかは、地区医師会毎に決められ、かかりつけ医の先生や患者様が選ぶことはできません。腎機能の悪化を防ぐ診療体制がどのようなものであるかを確認し、理想の診療体制を構築することが目的です。また、一定以上の腎機能の悪化があった場合には慢性腎臓病診療ガイドに則って腎臓専門医施設での加療・指導を受けていただくことにしておりますので、参加されるすべての患者様も安心して試験にご参加ください。また本研究に参加される地区医師会内にお住まいの方で、この研究ご興味を持っていただけましたら、参加にいくつかの基準がありますので担当の医師にご確認ください。

この研究は世界でも類を見ない慢性腎臓病の腎機能悪化予防のための研究です。この研究の成果は、今後の慢性腎臓病患者様の診療方針を定めるための貴重な情報となって、日本のみならず、世界の腎臓病治療に役立つことが期待されます。この研究を成し遂げるためには、皆様のなお一層のご協力が不可欠です。

数年後には日本から発信する(from Japan)、日本人のみならず、世界中の腎臓病の患者様の治療に役立つ成果を、このホームページ上から皆様にお知らせできるよう、研究チームならびにすべての参加施設スタッフ一同で努力したく思います。何卒よろしくお願いします。

筑波大学 山縣邦弘
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